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ワダパオ1個
1999年のこと。
25歳の若者スーラジは、故郷の小さな田舎町を出て、プネに来たばかり。
常に以前よりもビッグでありたい、が口癖の彼は、新天地で仕事を求めて毎日奮闘していた。
当時の収入は両親からの仕送り毎月3000ルピーだけ。
お金に困った時は友達や、下宿しているおかみさんに言えば貸してくれるかもしれない。
だがプライドの高いスーラジは絶対にそれはできなかった。
朝10時からネットカフェ・マネージャーの採用面接を予定していたその日は、ことのほか財布が寒く、次の仕送りまであと1週間あるのに、たった30ルピーしか持っていなかった。
面接先に向うため朝バイクに給油して25ルピー、バイクの駐輪代に2ルピーかかるとして、お腹の空いたスーラジは、残るたったの3ルピーで食べられるものとして、いつも行くワダパオ(
*プネの屋台
参照)屋へと向かった。
たくさんの人が群がる朝食タイムの「ジョーシー・ワダパオ」に着いてみると、店頭にたった今看板が掲げられたところだった。
「油、原料の値上げにつき、ワダパオ値上げ。1個3ルピー50パイサ」
スーラジは空を見上げながら、思った。
「俺はワダパオも買えないほどの男なのか・・・」
ふっと視線を横に移すと、ジョーシーワダパオ・ライバル店の「バールティ・ワダパオ」、客の数は雲泥の差で、スーラジだっていつもは見向きもしない。
しかし今日は違った。
一度は望みを失った瞳に、競争店の掲げる希望のメッセージが。
「ワダパオ・いつもと変わらず3ルピー」
心の底から神様にお礼を言い、握り締めた3ルピーを差し出したスーラジに、バールティ・ワラーはこれまた心から感謝を込めて、ワダパオを差し出した。
スーラジにとって、この1個のワダパオは忘れられない思い出の味となった。
ちなみに現在もプネに住む彼、もちろんいつもはジョーシーワダパオに行っている。
*このワダパオ2店はプネJangli Maharajロード近く、Bal Gandharvシアター向かいにあります。
*わたし個人の意見としては、バールティワダパオも悪くありません。
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