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古い大きな家

マハーラシュトラ州のヴァランガオン(Varangaon)という小さな町にある親類の家に、3泊4日ほど滞在した。

ヴァランガオン駅はとても小さな駅で、Passengerという鈍行列車しか止まらないが、近くにブサヴァル(Bhusaval)という、インドの4大都市デリー、ムンバイ、チェンナイ、カルカッタからの直通列車が止まる大きなジャンクション駅がある。
インドでも最も大きな武器製造工場のひとつがこの周辺にあることから、ブサヴァル駅に降り立つ


ヴァランガオン

と、ライフル銃を持った軍人さんたちの姿を見かける。
めったにないとは思うが、有事には灯火管制も敷かれることになるという。

訪ねた家はそんな田舎にある、築250年以上というとてつもなく古い家だった。
もちろん改築を重ねているので、建築当時のまま残っている部分はわずかだが。

町を見渡してみると、他の家々もずいぶんと年季のたった家が多く、先祖が建てた家を動くことなく代々住みつづけている人たちが多いのだろう。
しかし時代の変化により、大都市へ出ていってしまう家主たちもいるようで、レンガを積み重ねた家のあちこちが壊れたり剥げたりしているのに、直すこともできないままとりあえず住んでいる人たちもいたりして、危険な感じがする。

古くて大きな家で体験したのは、この町の誰からも慕われていたおじいさんの一周忌。
50人もの親戚、縁者たちが訪れた。
昨年の葬儀のときには500人以上詰めかけたという。

このような場合、一家の主婦は休む暇もなく働きつづけなければならない。
わたしたちみたいな泊まりの親戚たちが到着次第温かく迎え、朝、昼、夕食の準備などに追われる。
日本みたいに寿司なんかの出前やできあいの惣菜、田舎だから外食などでごまかす訳にもいかず、そこにいる人全員が満腹する量の料理を容赦なく毎回用意する必要がある。

もちろん儀式の日には親戚たちやお手伝いさんたちもたくさん来て準備を手伝うが、普通のサイズの台所に、少なくとも10人ぐらいのおばさんたちが集っている様子は見ているだけでも暑苦しい。
 

儀式の様子は日本の一周忌と似ているように思った。
13人の一番親しかった男性たちはぐるりと部屋に座る。
この人たちはおじいさんからさかのぼって13番目までの先祖と例えられる。

おじいさんの息子と僧侶は、お供えの食事を火で燃やし、おじいさんに最後の食事を与え、今日を境にこの世との縁を断ち切って自由に新しい人生を始めてくれるようにお祈りする。
亡くなったおじいさんを含め、今日から家族の者たちも、過去の思い出に区切りをつけることになる。


ブラーミンの前で食事を燃やす

ところがおじいさんの妻だったおばあさんだけは、違う。
ここに集う誰よりも、長い年月を共に過ごしてきたのは、おばあさん。
たった一年でその思い出が断ち切れるわけはなく、彼女に残されたわずかな人生は、おじいさんでいっぱいであり続けるだろうと思う。

いつも優しいおばあさんは、小さく小さく鳴らされたカセットテープの祈りの音楽を聴きながら、写真の前にいつまでも座って、おじいさんに何を話しかけているのだろう。


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